研究概要 |
骨組織の恒常性は骨の吸収と新生のバランスにより保たれ,その破綻は様々な病態を引き起こす。歯周病は,歯周ポケットにおける慢性細菌感染が原因と考えられているが,その際に産生されるプロスタグランディンE2(PGE2)やインターロイキン1(IL-1)などの炎症反応メディエイターが,歯槽骨における破骨細胞形成と骨吸収を促し,歯牙喪失を引き起こす。TGFβファミリーに属するTGFβ1とアクチビンは,抗IL-1活性を有し,BMP-2は異所性骨形成能を有することが知られている。これらの活性に注目し,我々は,平成10年度本研究により,TGFβファミリーメンバーの骨芽細胞と破骨細胞におよぼす効果を検討し以下のような研究結果を得ている。 1)TGFβ1とアクチビンは,プロスタグランディンE2(PGE2)による破骨細胞形成を抑制するが,BMP-2は,抑制効果を示さないこと,2)TGFβ1,アクチビンとBMP-2は,いづれも活性型ビタミンD3[1a,25(OH)2D3]による破骨細胞形成を促進すること,3)TGFβ1,アクチビンとBMP-2は,いづれもIL-1αによる破骨細胞形成を促進すること(BMP-2>TGFβ1,アクチビン),4)BMP-2は,骨芽細胞による破骨細胞分化因子[Osteoclast differentiation factor(ODF)]mRNAの発現を誘導し,BMP-2による破骨細胞形成促進効果はODFの発現を介する可能性があることなどを明らかにした。以上のような結果をふまえ,今後さらに,アクチビンを含めたTGFβ1ファミリーの骨吸収におよぼす効果をin vitro(器官培養)とin vivo(動物実験)で検討し,歯周病と骨粗鬆症治療への臨床応用の礎を築きたい。
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