研究概要 |
骨組織の恒常性は骨の吸収と新生のバランスにより保たれ,その破綻は様々な病態を引き起こす。歯周病は,歯周ポケットにおける慢性細菌感染が原因と考えられているが,その際に産生されるプロスタグランディンE2(PGE2)やインターロイキン1(IL-1)などの炎症反応メディエイターが,歯槽骨における破骨細胞形成と骨吸収を促し,歯牙喪失を引き起こす。我々は,TGFβファミリーに属するアクチビンが,抗IL-1活性を有することに着目し,アクチビンAの,破骨細胞形成の抑制効果の有無を検討してきた。平成12年度本研究により,以下のようなアクチビンAの破骨細胞形成制御のおける極めて重要な役割が明かとなった。 破骨細胞は,骨髄造血細胞の中で単球/マクロファージ前駆細胞(CFU-M)に由来し,少なくともマクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)と破骨細胞形成因子(OPGL/ODF/RANKL)の2つの蛋白因子の存在下で,破骨細胞に分化する。我々は,破骨細胞形成の制御機構を解析している過程で,M-CSFとOPGL/ODF/RANKL存在下でのマウス骨髄細胞による破骨細胞形成が,アクチビンAによってい著しく増強されることを見出した。同様のことが,英国の研究グループより報告されており(Biochem.Biophys.Res.Comm.268:2-7,2000),破骨細胞形成においてアクチビンAが,極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。この事実は,アクチビン阻害因子が,骨粗鬆症や歯周病の治療薬として利用できる可能性を示唆しており,現在,アクチビンAによる破骨細胞形成促進のメカニズムを解析すると共にアクチビンA阻害因子による破骨細胞形成阻害について検討中である。
|