研究概要 |
平成10年度においては,提出した研究実施計画に基づき,抗菌性モノマーMDPBを含有する試作接着システムの抗菌効果を以下のような方法で評価検討した。 1. 動物実験による窩底部残存細菌に対する抗菌効果の評価 ビーグル犬の前歯に象牙質深部におよぶV級窩洞を形成し,補助金により購入した高速冷却遠心機を用いて調製したStreptococcus mutans菌液を窩底部に浸透させた。その後,試作の5%MDPB配合プライマーを用いてコンポジッとレジン充填を行い,7日後に屠殺してHE染色により歯髄の組織像を観察した。その結果,試作プライマーを用いないポジティブコントロールと比較して,試作プライマー使用群においては炎症が弱い傾向にあることが明らかとなったが,より明瞭な結果を得るべく,塗布菌液や経過期間などの実験条件を変えて現在も試験を続行中である。 2. ヒトう蝕からの新鮮分離細菌に対する抗菌性評価 来院患者よりう蝕象牙質を採取し,補助金により購入した高速冷却遠心機を用いて菌液を調製した後,試作プライマーを添加して,殺菌性を評価した。その結果,5%MDPB含有試作プライマーは,MDPB非含有のコントロールプライマーやその他の数種の市販プライマーと比較して明らかに殺菌効果が強く,100倍まで希釈されても非常に強い殺菌性を有していることが明らかとなった。 以上のように,本年度の研究より,抗菌性モノマーMDPBを配合したプライマーは窩底部の細菌を効果的に殺菌でき,残存細菌によって惹起される歯髄の炎症を軽減できる可能性のあることが示唆された。
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