研究概要 |
平成12年度においては,提出した研究実施計画に基づき,抗菌性モノマーMDPBを5%含有する試作プライマーの生体親和性とin vivoにおける象牙質接着性を以下のような方法で評価検討した。 1.生体親和性の評価 ビーグル犬の前歯唇側に象牙質深部に及ぶV級窩洞を形成し,5%MDPB配合プライマーで20秒間歯面処理した後,ボンディングレジンとコンポジットレジンを用いて充填処置を行った。7日,30日および75日後に歯牙を抜去して薄切切片を作製し,HE染色を施して歯髄の状態を観察したところ,いずれの観察期間においても全く炎症反応は認められず,コントロールとして用いた市販プライマー(クラレ社製Mega Bondプライマー)の場合と全く同様であった。 2.In vivoにおける象牙質接着性の評価 ビーグル犬の犬歯または後臼歯唇(頬)側に象牙質に及ぶV級窩洞を形成し,5%MDPB配合プライマーまたはコントロールプライマー(Mega Bondプライマー)を用いて歯面処理を行い,コンポジットレジン充填を行った。7日後に歯牙を歯頚部で切断してGAにて固定後,試料を半切し,50%リン酸と10%NaOClにて象牙質を溶解した。後固定を行ってからアルコール上昇系列脱水,凍結乾燥を行い,SEMにて接着界面の形態を観察したところ,試作プライマーを使用した場合も,コントロールプライマーの場合と同様に約1μmの幅の樹脂含浸層の形成が認められ,十分な長さのレジンタグの侵入が観察された。 以上のように,本年度の研究より,抗菌性モノマーMDPBを配合したプライマーは,すぐれた生体親和性を有し,またin vivoにおいても信頼性のある接着性能を有することが明らかとなり,本試作接着システムが臨床応用に値することが示唆された。
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