研究概要 |
本研究の目的は,光硬化型グラスアイオノマーセメント(光セメント)のために開発された試作プライマーのサーマルサイクル(以後,TC)負荷後の接着耐久性について検討した。 実験に供試した材料は,フジIILC(GC)および2種類の試作プライマーである。リン酸エステル系試作プライマーは,5wt%のBis-methacryloxyethyl phosphate,35wt%の2-Hydroxyethyl methacrylate(以後,HEMA),0.5wt%のCamphorquinone(以後,CQ),0.1wt%の還元剤および10wt%のAcetone溶媒より作られている。カルボン酸系試作プライマーは,5wt%の4-methacryloxyethyl trimellitate anhydride,35wt%のHEMA,0.5wt%のCQ,0.1wt%還元剤および20wt%Ethanol溶媒より成る。対照として使用した歯面処理材は,市販の光セメント製品に付属するCavity conditioner(GC)である。歯質接着耐久性は製作された接着試片に5℃-60℃を1TCとして3,000回,10,000回および30,000回をそれぞれ負荷した後に試験された。評価は牛歯のエナメル質と象牙質に対するせん断接着強さ試験,接着試験後の破壊形式および接着試験後の走査型電子顕微鏡観察(JSM-5400,JOEL)により行われた。 試作プライマーは,エナメル質および象牙質接着強さの成績を向上した。接着強さは,TCの負荷回数が増加するに伴い,すべての試片で低下する傾向を示した。とくに,象牙質での劣化は,プライマー中の機能性モノマーの種類によって低下する時期が異なることが判明した。すなわち,カルボン酸系のMEでは象牙質接着強さの低下する時期が遅れる傾向であった。フジIILCと歯質との接合界面には,無構造の耐酸性層を認めたが,接着耐久性との関係については明らかにできなかった。
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