研究概要 |
1.安定性能試験 光硬化型グラスアイオノマーセメント(以後,光セメント)の象牙質接着性を向上させる効果を有する専用プライマーを用い温度付加を加えた条件下でのエナメル質および象牙質の接着強さおよび接合界面のSEM観察を行い専用プライマーの性能試験を行い以下の結論を得た。 リン酸エステル系とカルボン酸系の機能性モノマーと10%アセトン溶媒を含む試作プライマーは光セメントの歯質に対する接着強さが高く、その接着耐久性も優れていることが示唆された。次いで,試作された専用プライマーの保管環境による安定性を検討する一環として、保管温度がその接着性能におよぼす影響について,3種の試作専用プライマーと光セメントを用いて検討し以下の結論を得た。すなわち,接着強さは、いずれの製品でも経時的に低下し、とくにリン酸エステル系専用プライマーとカルボン酸系専用プライマーの両者は高温保管によって著しく低下し安定性に劣ることが判明した。接着試験後の破壊形式でも、高温保管条件で界面破壊が多く経時的に増加した。したがって、臨床使用する専用プライマーはグラスアイオノマー系のものを採用することとした。 2.臨床評価 グラスアイオノマー系汎用プライマーの短期臨床成績は、この汎用プライマーのUSPHSに準じた臨床評価項目の検討や、器材などの準備も済み、厚生省からの使用許可が下り次第、下記の検討項目について試験を行う予定である。 グラスアイオノマー系汎用プライマーを使用するIILC修復の経過観察は6ヶ月とする。評価時期は、術前(修復前)、修復後1週間、1,3,および6ヶ月の計5回とする。評価項目は、術前の臨床症状として歯髄反応(自発痛、冷水痛、温水痛、擦過痛および打診痛)の有無および程度、歯肉の状態を診査する。さらに、術後臨床症状としては、歯髄反応の確認のために自発痛、冷水痛、温水痛、打診痛および咬合痛の有無と程度、歯肉の状態を診査する。修復物の性状として修復物の保持、色調適合性、着色、辺縁適合性、解剖学的形態、表面性状、辺縁部破折、体部破折、二次う蝕および再修復、再治療の項目について診査し、USPHSの評価基準を参考にして作製した基準に従って、2名の評価者による合意によって行われる予定である。
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