研究概要 |
印象材から模型を撤去する際、模型の破損を経験する。トレーから模型を容易に撤去できればこのような失敗を防げると考え、形状記憶合金に着目した。そこで、古河電気工業株式会社と共同で厚さ0.67mm、30×30×15mmに設計した形状記憶合金製トレーを試作した。 1.引き抜き強さの測定 シリコン印象材(EXAFINE,Nissin)および超硬石膏(NEW FUJIROCK,GC)を用い顎模型(D15FE-500A,Nissin)の印象採得後、石膏模型の引き抜き試験を行った。その結果、従来型トレーでは23.5N(2.0)、形状回復をしない試作トレーで23.5N(4.0)であったのに対し、形状回復した試作トレーでは15.7N(2.0)であった。 2.耐久性 70℃でトレーの形状を回復した後、指圧でトレーの幅を20mmにせばめる動作を繰り返した。はじめ30mmであったトレーの幅は、100回で24.0mm、5,000回後で23.1mmであった。しかし、加熱による形状記憶効果によりもとの寸法に回復した。また、オートクレーブ処理を100回行ったところ、復元量に変化は認められなかった。 3.石膏模型の取り出し易さの比較 欠損を有する3種類の顎模型(Simulation Model UK-T10,OK-T4,UK-T2)を用い、試作トレーと従来型トレーでどちらの方が石膏模型の取り出しが容易か評価した。その結果、試作トレーの方が石膏模型の取り出しが容易であった。石膏模型の破損は従来型トレーで3試料に見られたが、試作トレーでは認められなかった。 以上のことより、形状記憶合金製の印象用トレーは臨床応用に有効と思われる。
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