研究概要 |
小唾液腺である口蓋線唾液分泌量の測定方法としては,直接カニューレを挿入し採取する方法が不可能であり、今のところ,硬口蓋乾燥後,印象採得を行い作製された石膏模型上に印記される唾液の滴を観察する程度で,定量的測定法は,確立されていない. そこで,筆者らはヨードデンプン反応を応用したもっと簡便な口蓋腺唾液分泌量の測定法を考案し、本研究の目的および方法についての了解を得た健常有歯顎者を被験者とし、安静状態における口蓋腺唾液分泌量の測定を行った。その結果、この測定方法では、口蓋腺唾液分泌を黒紫斑点として視覚化できるため、濾紙上に印記された部分をスキャナーを用いてデジタル画像としてコンピューターに取り込み,Photo shopを用いて画像処理し,画像解析ソフトウェアで面積を測定し,唾液分泌量として表すため、定量的な口蓋線唾液分泌量の測定が可能となることがわかった。今後は、この測定方法の確立のため、客観性および再現性について検討を加える予定である。 また、筆者らは、全身的および口腔内に疾患を有しない15-20才の健常有歯顎者10名を被験者に用いて、口蓋床粘膜面のサンドブラスト処理前後の口蓋床の離脱力の差の比較検討を行った。その結果、サンドブラスト処理後では処理前に比べ,p<0.01で有意に維持力が大きいこと、また、各被者間では離脱力の値にはばらつきか認めらることがわかった。これは、口蓋線唾液分泌量が口蓋床の離脱力に関与する要因の1つではないかと考察し,今後は、さらに前述の口蓋腺唾液分泌量の測定方法を応用し、口蓋床の離脱力と口蓋線唾液分泌量の関係を検索し、上顎総義歯の後縁形態の決定の指標など臨床においても役立てる所存である。
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