唾液は、咀嚼・嚥下・発音・消化などに関与し、重要な役割を担っている。近年、高齢化社会に伴い、この唾液分泌に異常をきたす高齢患者がしばしば認められ、分泌機能を的確に把握する必要性が高まってきた。しかし、唾液分泌を的確に測定することは困難であり、特に分泌量が少ない小唾液腺については、現在においてもその定量的測定法は確立されていない。そこで本研究は、義歯の維持力とも強く関係する小唾液腺・口蓋腺について、その分泌量の定量的測定法の確立を目的とした。 著者らは、口蓋腺唾液分泌量が耳下腺などの大唾液腺と比較して微少であること、またその分布も広範囲に及ぶことが皮膚の発汗と類似することに着目し、ヨウ素・デンプン反応を利用した微量の発汗検査方法である和田・高垣法を口蓋腺唾液分泌量の測定に応用した。本研究では、唾液分泌機能に異常の認められない健常有歯顎者を被験者とし、その安静状態における口蓋腺唾液分秘量の測定から、最も再現性の高い術式および条件設定を追求した。その結果、(1)口蓋床の作製法(リリーフ厚み、圧接域の設定)、(2)濾紙の成形法(濾紙の厚み・範囲・種類の設定:Whatman定性濾紙No.1)、(3)試薬の塗布法(試薬の濃度・塗布法の設定:3%ヨード無水アルコール溶液・15分乾燥、デンプン25g・ひまし油75ml・10分乾燥)、(4)唾液分泌量測定法(測定手順・時間の設定:15〜30sec)、(5)発色面積の測定法(解析法の確立:スキャナー取り込み・Photoshop画像処理・画像計測ソフトPi)、(1)から(5)までのそれぞれの測定過程における条件設定が完了した。測定値のばらつきおよび再現性の分析から、本方法が、十分臨床応用可能な口蓋腺唾液分泌量の測定法であることが推察された。
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