本研究に関して我々は主に次のようなテーマに取り組んだ。 1.口腔扁平上皮癌由来細胞株およびヒト正常口腔粘膜由来表皮角化培養細胞のテロメラーゼ活性の検索ならびに癌化モデルとの比較 2.口腔扁平上皮癌組織、白板症組織、正常口腔粘膜のテロメラーゼ活性の検索 口腔扁平上皮癌細胞株では検索した8株全てで高レベルのテロメラーゼ活性が認められた。しかしそのうち2細胞株ではその他の細胞株よりも優位に(1/3〜1/4)テロメラーゼ活性が低かったが、その低活性と遺伝的背景、すなわちp53やp16遺伝子、EGFR蛋白質などとの相関関係は不明であった。また以前に我々が報告したp53やH-Ras等の遺伝子情報が判明している細胞株6細胞株全てでワインバーグらが示したようにp53、RB両方の経路が阻害されていることが判明した。 口腔扁平上皮癌組織では77%白板症組織では47%の組織にテロメラーゼ活性が認められたが正常組織ではテロメラーゼ活性は認められなかった。また、口腔扁平上皮癌組織では白板症組織よりテロメラーゼ活性は高かった。さらに今回検索した白板症組織はほとんどの組織で異型性が軽度にもかかわらず、テロメラーゼ活性が認められた。このことは前癌病変であってもテロメラーゼが活性化しており、不死化機構を獲得しつつあることを示している。
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