研究課題/領域番号 |
10557189
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松矢 篤三 大阪大学, 歯学部, 教授 (40028759)
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研究分担者 |
飯田 征二 大阪大学, 歯学部, 講師 (40283791)
古郷 幹彦 大阪大学, 歯学部, 助教授 (20205371)
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キーワード | サーモグラフィー / 三叉神経 / 下歯槽神経 / 神経障害 / 知覚麻痺 / 体性感覚誘発電位 |
研究概要 |
三叉神経麻痺の診断におけるサーモグラフィーの有用性について研究を行い以下の結果を得た。1 : 片側の下顎孔伝達麻酔にて片側の下歯槽神経支配領域を麻痺させ、皮膚表面温度への影響を観察した結果、安静時では知覚消失の影響は明瞭ではなかったが、冷却負荷試験での皮膚温の回復過程は、個体差が存在するものの、健側患側間での温度差は明瞭となることが確認された。2 : 客観的に神経の損傷が確認できる三叉神経体性感覚誘発電位 (TSEP) と、サーモグラフィーでの皮膚表面温度変化の差異を健常者での伝達麻酔下で比較した結果、TSEPは感覚が遮断された状態では波形の平坦化が観察されたのに対し、表面温度の変化は観察する時間によって表面温度差の程度は変化することが確認され、交感神経支配である表面温度の観察は、被験者の精神状態によっても影響をうけることが確認された。しかしながらTSEPでは刺激条件の設定条件を決定するのが繁雑であり、また、日を異にした際の波形の再現性に問題があることが確認され、臨床において損傷された三叉神経の回復過程あるいは損傷の程度を評価するのは困難であることが確認された。3 : 下歯槽神経傷害を有する患者でのサーモグラフィーを用いた検討では、受傷内容あるいは経過期間で異なるが、患側と健側との表面温度に明瞭な差が観察される傾向があり、また、冷却負荷にてその差は明瞭に観察された。4 : ラットで作成した下歯槽神経切断モデルと結紮による損傷モデルを用いた基礎的研究では両モデル共に神経処理側に温度が高い傾向があり、特に前者においてその差は大きく観察された。 以上の結果より三叉神経障害に対するサーモグラフィーによる表面温度の観察は、三叉神経の知覚異常を評価するには至らないが、同神経に随伴する交感神経の損傷症例では客観的に障害の所在を示し、また、その回復過程を評価する検査として有用であることが確認された。
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