研究概要 |
前年度行った動物実験ーすなわちビーグル犬の下顎骨に形成した区域切除にパテ状の非崩壊型アパタイトセメントを充填しその上からチタンメッシュプレートで被覆ーで1年経過したものに対し灌琉固定を行ない,脱灰・非脱灰切片を作製した.作製した切片をH-E染色,Movat's Pentachrome染色を行なって病理組織学的にアパタイトセメントと周囲硬組織,軟組織の状態を観察,検討した.その結果,セメント埋入1年後では顎骨欠損部に充填したアパタイトが大部分吸収せずに残存していた.また症例によっては埋入されたアパタイトセメントに一部亀裂がはいって結合組織の侵入が認められた.これに関してはセメント充填時の手技により生じた亀裂と考えられる.セメント周辺には炎症症状は全くみられず,また短期動物実験で認められた異物反応も存在しなかった.Movat's Pentachrome染色では,埋入したアパタイトセメント周囲に骨が新生し黄褐色に染色された成熟骨が結合組織を介さずに直接セメントと接しているのが確認された. 粉末X線回折による非崩壊型アパタイトセメントからアパタイトへの変換量の測定では、短期間(24時間,4週間)での実験結果に比べて1年後では残存しているTTCPの量が減少し相対的にアパタイトヘの変換量が増量していた. 今年度の実験結果より,われわれが開発した非崩壊型アパタイトセメントは長期実験においても生体親和性に優れほぼアパタイトに変換していることが確認できた.さらにアパタイトの骨誘導能により新生した骨はアパタイトに直接接しており同セメントは骨欠損部の補填材として機能していると考える.ただ1年経過してもほとんどセメントは骨に置換せず残存していることより今後もセメントが骨に完全に置換する可能性はほとんどないと思われた.
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