研究概要 |
本年度の研究目的は,ビーグル犬下顎骨に作成した骨欠損部に補填したアパタイトパテの埋入後12ヶ月の組織学的評価を埋入後6ヶ月のそれと比較検討し,さらに骨の新生速度の検討,アパタイトパテのアパタイトへの変換量の測定を行なうことにより,研究申請者らによって開発したアパタイトパテの新しい骨再建・補填材料としての臨床における有用性を検討した. その結果,顎骨欠損部にに充填したアパタイトパテは埋入12ヶ月後においても埋入6ヶ月と同様大部分吸収せずに残存しており,既存骨と接している周囲のみ骨に置換していた.すなわち6ヶ月以降骨の新生が起こっていないと考えられた.また症例によってはアパタイトパテ埋入時の不備により亀裂が生じていたが,その亀裂内に一部骨の新生が認められた.またアパタイトパテ周辺の組織は12ヶ月経過しても6が月後と同じように炎症反応や異物反応は認められなかった.テトラサイクリンを投与して骨のラベリングを行ない骨新生の状態を解析したが,アパタイトパテ埋入初期にテトラサイクリンの取りこみが見られただけであった.粉末X線回析による非崩壊型アパタイトセメントからアパタイトへの変換量の測定では、短期間(24時間,4週間)での実験結果に比べて1年後では残存しているTTCPの量が減少し相対的にアパタイトへの変換量が増量していた. 以上の結果から,われわれ申請者らが開発したアパタイトパテは,今回の中型動物に長期埋入した実験結果より,生体親和性に優れた生体材料であり生体内に埋入することにより早期にアパタイトに変換されることは証明された.しかし,アパタイトパテが早期にアパタイトに変換されても骨への置換はわずかに既存骨と接している部位でのみ起こっているに過ぎず,それ以上の骨への置換は起こらなかった.すなわちアパタイトが骨に置換するするためには間葉系細胞との接触が必要であると考えられる.
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