研究概要 |
この研究の目的は口腔保健調査の診査項目を整備し,得られたデータの集計,分析,蓄積および結果の解釈に関し,地方自治体,保健所,保健センターに対し支援することである。その手段として,口腔健康調査用のデータベースソフトウェアを試作する。 ベースライン調査は70歳600名,80歳163名について実施された。歯冠平均DT,FT,DFTは対象者全体でそれぞれ0.27,7.86,8.12,根面平均DS,FS,DFSはそれぞれ0.57,1.40,1.97であった。根面DS所有者は歯冠DT所有者より多く,根面FS所有者は歯冠FT所有者より少なかった。歯冠DTを所有している者はない者より根面DSを所有している確率が5.6倍高かった(P<0.001)。歯冠DTと根面DSの相関係数は0.32であった。ミュータンス連鎖球菌レベルが高いほど根面う蝕歯面率は高く,平均根面う蝕歯面数も多い結果を認めた。 有歯顎者658人(70歳554人,80歳104人)について,平均現在歯数は70歳で18.8本,80歳で12.8本であり、年齢に有意差が認められたが有意な性差はなかった。平均PDは70歳で2.0mm,80歳で2.2mmと年齢差は認められなかった。現在歯数別にみると,70歳では現在歯数の多い群で小さい傾向にあった。平均LAは70歳で3.1mm,80歳で3.4mmと年齢差はなかったが,男が女より大きな値を示した。現在歯数別にみると,現在歯数の多い群でLAは有意に小さかった。 現在歯数と食物摂取状況との関連を重回帰分析により評価した結果,歯牙本数別では総摂取エネルギーに有意差は認められなかったが,20本以上の群に比べ0本群、1〜10本群で6群別の野菜群の摂取エネルギーが有意(p<0.05)に少なくなっていた。また口腔内の自覚症状項目で歯の動揺ありと回答した者は有意(p<0.05)に野菜群の摂取エネルギーが少なくなっていた。 次年度は同じ対象者を追跡調査(2年目コホート)し,基礎資料を得るとともに,その変動(1年間・2年間)について解析する予定である。
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