研究概要 |
この研究の目的は口腔保健調査の診査項目を整備し,得られたデータの集計,分析,蓄積および結果の解釈に関し,地方自治体,保健所,保健センターに対し支援することである。その手段として,口腔健康調査用のデータベースソフトウエアを試作する。そのために必要な基本的な基礎データ解析を本年度は行った。 70歳591名および80歳158名について,社会的要因などの交絡因子の影響を考慮し,高齢者における体力と咬合機能・形態との関連性をみることを目的とした。口腔形態として現在歯数,Eichner index(EI),口腔機能として15種類の食品による咀嚼能力について調べた。また,身長,体重,質問紙票による社会的要因などについても調べた。重回帰分析の結果,脚伸展パワーに影響を与える変数はEichner index Class A(EI-A),ステッピング回数では現在歯数20本以上,EI-A,ロジスティック回帰分析の結果,開眼片足立ち時間に影響を与える変数は現在歯数20本以上,EI-A,EI-B,全ての食品がかめるであった。以上の結果は,高齢者において天然歯(咬合支持)による良好な咬合機能・形態の維持が日常生活動作関連の体力維持につながる可能性を示唆した。 高齢者の根面う蝕の多発は感染に対する宿主応答の低下に起因するという仮説の検証のため,ベースライン時70歳600名のうち,12カ月後,24カ月後の計3回調査を行えた379名を対象に,根面う蝕発生リスクを解析した結果,ベースライン時に根面未処置歯の存在,歯冠う蝕経験,Loss of attachmentが大きい,唾液中lactobacilliレベルが高い,歯間ブラシ・フロスを不使用,という口腔に関する変数,BMIで示される痩せていることがリスクプレディクターとして示された。
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