研究概要 |
本研究では,抗酸化性タンニンおよびその含有天然素材の多くが免疫性抗腫瘍作用,発癌プロモータ抑制作用を示すことに着目し,癌さらには酸素ストレスと関係付けられる他の生活習慣病の予防に重点をおいた医薬品,機能性保健食品等の開発・応用を目的とし,広く薬用植物,食品等の天然物から,安全で有効な新規天然抗酸化性成分を探索する他,Epstein-Barrウイルスの初期抗原[Early Antigen (EA)]誘発を抑制する抗発癌プロモータ活性成分の探索を行い,それらの単離,構造解明を実施する. 本研究課題において本年度に得た成果は概略以下の通りである. 1.TPA(発癌プロモータ)により誘発されるEBV-EAに対して抑制作用を示した植物のうち,バラ科植物のビワ葉,さらにはフトモモ科植物(Eucalyptus cypellocarpa,Kunzea,ambigua)およびシダ植物(Dryopteris fragrans)等についての活性成分の分離,構造研究を行い,新規成分20種以上を含む多くのポリフェノール(flavonoids,proanthocyanidins),テルペノイド(megstigmane配糖体)およびフロログルシノール系成分を活性物質として特定し,それらのin vitro EBV-EA抑制活性の比較を行った. 2.In vitro実験系で顕著な活性を示した各タイプの化合物のin vivo抗発癌試験を,マウス皮膚での2段階発癌実験により評価し,緑茶のカテキン(EGCG)に匹敵する強い活性を示すものがあることを見出した. 3.今回単離した化合物について,ヒト口腔癌細胞に対する細胞毒性をも評価し,ビワ葉から得たprocyanidin oligomerに顕著な選択毒性を認めた.またこの活性は,がん細胞に対するアポトーシス誘導作用によるものであることを明らかにした. これらの活性を示した化合物の多くはポリフェノール性物質であり,これらには優れたラジカルスカベンジャーとしての機能も知られていることから,それらを含む植物素材は各種慢性疾患の予防に有効であるとみられるので,その分野での更なる研究の発展につながる結果を得ることが出来た.
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