平成10年度の報告において、M細胞を用いた肝の線維化阻害物質の探索方法が実用化され、実際に本法を用いたところ、予想に反して線維化阻害ではなく、線維の細網化を引き起こす物質の単離する結果となった。 本年度は、さらに一般的なスクリーニングからウリノキ科植物モミジウリノキの葉部の酢酸エチル可溶分画に強いコラーゲン線維形成阻害活性の有ることを見いだし、本物質の単離を試みた。各種クロマトグラフィーを繰り返し、活性成分を6mg単離した。質量分析、核磁気共鳴スペクトルを解析した結果、本物質はフラボンの誘導体であり、それにフェニルグリセロールが結合していると予想された。結合位置はフェノール性水酸基がビシナルな位置でなければならないので、水素の核磁気共鳴スペクトルからC環であると結論された。しかし、結合の様式には二通りの可能性が有り、遠隔結合を観測するする二次元核磁気共鳴スペクトルで検討したが判断できなかった。そこで、NOEスペクトルによって更に検討を重ね最終構造を確定した。本物質は濃度2μg/mlで充分な抑制活性を示した。その他、構造活性相関の立場から構造の類似した、数種のラボン類の活性を検討したところ、カテコール部分を有する化合物に阻害活性が見られた。しかし、本物質にはカテコール部位は存在するものの、それはフェニルグリセロールの2級ジオール部とエーテル結合して環を形成しており、今後この点に関しての考察が待たれる。 以上、コラーゲン産生細胞を用いて、その産生を阻害する物質を単離した。前年度の報告を合わせ考慮すれば、開発した方法がM細胞のコラーゲン合成に影響を与える物質の探索に用いること出来る判断される。
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