研究概要 |
我々は,これまでに,ベンゾフラザン骨格を有する蛍光エドマン試薬DBD-NCSおよび環化切断反応触媒としてBF_3を用いたペプチドのN末端逐次配列/絶対配置分析法を報告した。この方法は従来のエドマン法の転換反応を省略し,切断反応によって生じるチアゾリノン誘導体を検出する簡便な方法である。我々は,さらに,蛍光エドマン試薬であるPSBD-NCSおよびMSBD-NCSを合成した。これらの試薬を用いることでさらに数倍高感度化することができた。 しかし,一般にチアゾリノン誘導体は不安定であるため,より安定な誘導体に変換し,分析することが望まれた。今回,DBD-NCSを用い,環化切断反応により生じたチアゾリノン誘導体を加水分解しチオカルバミン酸誘導体とした後,過酸化水素で酸化することにより安定で蛍光性のカルバミン酸誘導体を得た。これを蛍光ーHPLC法で分析し,逐次配列/絶対配置分析を行った。 さらに,チオヒダントイン誘導体で蛍光性を有する蛍光エドマン試薬(MTBD-NCS)を合成した。MTBD-NCSは,チオカルバミン酸誘導体,カルバミン酸誘導体などでは蛍光性を有さないため,HPLCのクロマトグラム上 に分解物由来のの妨害が少なく,従来の蛍光エドマン試薬と比較してチオヒダントイン誘導体のピークの同定が容易であった。MTDB-NCSとBF_3を用いることで,高感度なペプチドのN末端逐次配列/絶対配置分析法を開発できた。本法は,市販のペプチドシ-クエンサ-に応用できるため極めて繁用性が高いと考えられる。
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