研究課題/領域番号 |
10557214
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
辻 彰 金沢大学, 薬学部, 教授 (10019664)
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研究分担者 |
玉井 郁巳 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (20155237)
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キーワード | トランスポーター / 消化管吸収 / ペプチド / モノカルボン酸 / 遺伝子発現系 / ドラッグデリバリー / エンドサイトーシス |
研究概要 |
本研究においては薬物の消化管吸収性促進を目的とし、小腸上皮細胞に備わるトランスポーターならびに膜動輸送機構に関する研究を行った。その結果、モノカルボン酸輸送については、アニオン交換輸送体として働く分子的実体の一つとしてAE2やMCT1が安息香酸やサリチル酸などのモノカルボン酸系化合物の消化管吸収に働いていることがわかった。即ち、pH依存的なモノカルボン酸輸送系としてMCT1やAE2が重量な役割を果たしていることが示唆され、モノカルボン酸系化合物の小腸上皮細胞膜輸送におけるトランスポーターの重要性が明らかとなった。一方、ペプチドトランスポーターPepT1については抗ウイルス薬アシクロビルのバリエステル体がその基質となることを明らかにした。本結果はPepT1の基質認識に対してペプチド結合が必須でないことを示す新しいPepT1の機能特性を提示するものである。また、パーキンソン病治療薬L-dopaのペプチド誘導体を合成し、その吸収性促進効果について検討を行った結果、L-dopaがアミノ酸輸送系を介して吸収されるよりも誘導体がペプチド輸送系を介して膜透過されるほうがより高い吸収性が期待できることが示された。以上の成果は、PepT1の機能ならびに経口デリバリーへの応用性について新たな知見を与えるものである。さらに分子サイズの大きなペプチドの経口デリバリー法の樹立を目的とし、小腸における吸着介在型エンドサイトーシス機構について検討をした。その結果、小腸には塩基性ペプチドを幅広く取り込むエンドサイトーシス機構が備わっていることを明らかにできた。以上、本研究成果は、消化管に備わるトランスポーターあるいは膜動輸送機構が薬物の消化管吸収に機能することを実証するものであり、またそのような膜輸送機構が薬物の消管吸収性を制御する手法として有用であることを示すものである。
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