研究概要 |
細胞膜受容体刺激によってG蛋白質は活性化され,αとβγサブユニットとに解離するが,αに加えて,βγ(Gβγ)もいくつかのエフェクター分子の活性を直接制御することが見出されている。我々は先に,チロシンキナーゼ系とGβγによって相乗的に活性化されるイノシトールリン脂質3-キナーゼ(PI3K)として,110-kDaβ触媒(p110β)/85-kDa調節(p85)サブユニットからなる2量体型PI3Kを同定したが,平成11年度は,この分子種のPI3Kを中心にさらに解析を進め,以下の知見を得た。1.構成的に活性化型のp110β-PI3Kと相互作用する分子を酵母のtwo-hybrid系を用いて検索し,低分子量GTPaseファミリーのRab5を同定した。2.Ser/ThrキナーゼのAkt (PKB)は,PI3Kの産物であるPIP3により活性化されるが,インスリン刺激に応答するAktの活性化は,活性化型Rab5の遺伝子導入で増強され,不活性化型Rab5の介在が初めて示された。3.活性化型Rab5の相互作用分子をtwo-hybrid系を用いて検索し,SH2ドメインをもつ新規分子群を同定した。4.エフェクターとしての役割が期待される新規Rab5結合蛋白質群は,初期エンドソームに局在化することが示された。5.リンパ球細胞において,Fcγ受容体刺激でチロシンリン酸化されるPI3Kのアダプター分子として,癌遺伝子産物p120^<c-cb1>と100-kDa蛋白質を同定した。100-kDa蛋白質は,G蛋白質共役型受容体刺激によりそのセリン/スレオニン残基がリン酸化されるというユニークな挙動を示し,Gab2であることを見出した。
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