レチノイン酸の核内受容体RARおよびRXRに対する特異的リガンドのデザイン、合成を行い、そのレチノイドもしくはレチノイド作用制御活性を評価した。本研究者はベンツアニリド、ジフェニルアミン誘導体にそれぞれ強力まRAR、RXRアゴニスト活性を見いだしているが、更なるヘテロ原子、特に窒素原子導入による効果を検討した。その結果、RARアゴニストであるAm80の持つ安息香酸のフェニル基をピリジン環に代替した場合にはヒト白血病細胞を用いた分化誘導検定系におけるレチノイド活性の向上がみられたが、窒素原子を2つ含むピリミジン環に変換した場合には活性が消失することを見いだした。このピリミジン誘導体はRARに対する結合能を示さない。 一方、RXRアゴニストであるジフェニルアミン誘導体の安息香酸をピリミジンカルボン酸に変換した場合には、逆に、HL-60細胞検定系で著しいレチノイドシナジスト活性の上昇が観測された。興味深いことに、このレチノイドシナジスト作用における置換基効果はジフェニルアミン誘導体とピリミジンカルボン酸では異なっており、ピリミジン環内窒素原子の非共有電子対が化合物の立体構造に関与していることが示唆された。ピリミジンカルボン酸の強力なレチノイドシナジスト作用もRXRに対する結合・活性化であることを、各種受容体を用いた転写活性化実験により明らかとした。 また、本研究者が見いだしたRXRアゴニストはHL-60細胞検定系でビタミンDの分化誘導能に全く影響を与えないが、PPAR・RXRヘテロダイマーの転写活性化を引き起こすことを見いだした。以上のことから、新規RXRリガンドが他の核内受容体の機能を選択的に制御しうることが明らかとなった。
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