研究概要 |
1.モデル動物の解析 筋電位waxing現象が確認された抗体産生細胞起因の腹水からIgGを精製し,マウス小脳を抗原としたwestern blottingを行ったところ,80kDa付近に特異的バンドを見いだした。4回継代後にマウス腹腔内に注射し、横隔膜の終板電位を細胞内記録したが、waxing現象は認められなかった。腹水IgGを精製してwestern blottingを行ったところ上記バンドが消失していたことから,80kDa蛋白を認識する抗体がLEMS様症状発症の原因となっていた可能性がある。 2.SCLC細胞のP型Caチャネル 高K^+刺激時におけるSCLC細胞のCa上昇をイメージング法で測定し,各Caチャネルタイプの特異的毒素による阻害効果を調べた。その結果全体のCaチャネルのうちLES発症原因とされるP型Caチャネルの割合は約20%であると推定された。 3.Ca動態に及ぼす患者血清の効果 SCLC細胞を患者あるいは健常人のIgGをインキュベートし、高K^+刺激時のCa上昇の差を調べたが、有意差は認められなかった。 4.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の効果 マウスの神経筋標本を用いて、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル)の効果を調べたところ,quantal contents の増大が認められ,しかも,LESの治療に現在繁用されている4-aminopyridine(副作用大)と相乗作用があることを見出した。 5.P型Caチャネル可視化の試み LES発症機構と考えられているP型Caチャネルのdown regulationの機構として,internalizationを仮定した。これを実証する目的で,FITC標識した合成ペプチド毒ω-AgalVAを用いてP型Caチャネルの蛍光ラベル化の可能性を検討したところ,共焦点顕微鏡下でSCLC細胞膜近辺に明るい蛍光が認められた。
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