研究概要 |
ヒトゲノム計画は終了する見込みとなり、疾患遺伝子解析がこれから加速することが予想される。とくに「生活習憤病」などのcommon diseaseの遺伝解析に興味がもたれている。これまでのところ、本態性高血圧症、アルツハイマー病などにおいてプロモーター領域の遺伝子変異が疾患の原因となっていることが報告されている。血圧調節において重要なアンギオテンシノーゲン遺伝子においてTATA boxと転写開始点との間に生じた塩基置換が転写活性に影響を及ぼし、本態性高血圧症の原因となることを我々は明らかにした。現在、培養細胞とプラスミドを用いたレポーター転写実験法で転写活性が測定されているが、これらの成績は生体の生理条件を反映しているとは、言い難い。特に慢性疾患に関連する僅かな転写活性の差を検出するのは不可能で、新たな転写活性測定法が必要と考えられた。 本研究ではプロモーター変異を目的細胞に相同組換えで導入することにより、ヌクレオゾームを含むin vivoでの転写への影響を調べる。マウスアンギオテンシノーゲン(agt)遺伝子を129系のマウス遺伝子ライブラリーより分離し、プロモーター領域とエクソン1そしてイントロン1の一部を含む長さ13kbのクローンをpBluescriptに組み込んだ。そしてこのインサートをターゲティング用ベクター(TT222),ユタ大カペッキー教授から供与、に導入することができた。目的とするTATA boxと転写開始点の遺伝子点変異(G-6A)をPCR mutagenesisにより作成し、ターゲーットベクターに導入する。実際にはプロモーター領域を含む断片(KpnI,EcoRI)をプラスミドにいれ、そこでPCR mutagenesisをおこなった。また一方で、アレルの片方を破壊すると、変異の転写活性への影響を測定しやすいので、エクソン1にneo遺伝子を組み込んだベクターも作成中した。これらを体細胞へtransfectionし、相同組み換えを試みた。細胞系としてマウス肝癌細胞(Hepa1-6)および我々が独自に樹立したマウス近位尿細管細胞(tsMPT)をもちいている。残念ながら相同組み換えをおこしたクローンを得るにいたっていない。
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