研究課題/領域番号 |
10557242
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
有吉 範高 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (00243957)
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研究分担者 |
峯 毅 住友製薬(株), 総合研究所・開発研究所, 主任研究員
鎌滝 哲也 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (00009177)
中山 佳都夫 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (20261323)
高橋 芳樹 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (80292019)
藤田 健一 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (60281820)
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キーワード | 薬物代謝 / チトクロームP450 / CYP2D6 / 遺伝的多型 / poor metabolizer / 薬の効き過ぎ / 遺伝子解析 / フレームシフト型変異 |
研究概要 |
CYP2D6は抗精神薬をはじめ、現在臨床応用されている多くの重要な薬物の代謝に関わるP450分子種であるが、日本人においては酵素活性が顕著に低いか欠損しているヒト(PM)の頻度は極めて少ない。そのため本邦で開発中の医薬品が本酵素の基質に該当しても、開発段階の治験でPMへの効き過ぎによる副作用が見逃される可能性が高く、上市された後多くの患者に適用されて初めて効き過ぎによる医療事故につながる危険性が高い。申請者らは本酵素の代表的基質である抗高血圧薬デブリソキンによる表現系解析で明らかにPMであると判定された検体につき遺伝子解析を行なった。その結果、片側アリルは申請者らがすでに日本人から見い出していたJ9型であったものの、他方のアリルは従来日本人PMに見い出されていたA型、B型、D型およびJ9型のいずれにも該当しないため、新たな遺伝子型を持っていると推定された。そこでCYP2D7P,CYP2D8など、相同性の高い偽遺伝子を避け、CYP2D6遺伝子のみを特異的に認識するようにプライマーを設計し、CYP2D6特異的に増幅する手法を確立した。その方法を用いてPMから得られたCYP2D6遺伝子につき塩基配列の解析を行なったところ、エクソン5のCが7つ連続する領域にさらに一塩基Cの挿入が起こっていた。このたった一塩基の挿入のためにアミノ酸の読がずれて(フレームシフト)11塩基下流において終止コドンを生じてしまい、そこで酵素蛋白質への翻訳がストップするこが明らかとなったため、C8型変異と命名した。したがってこのアリルは機能的な酵素を発現しないと結論付けられた。すなわち、被験者となった日本人は、片側アリルに酵素活性の著しい低下を招くJ9型、他方のアリルに酵素活性の完全消失を招くC8型変異を有するためにPMとなったことが明らかになった。
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