研究分担者 |
中山 佳都夫 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (20261323)
高橋 芳樹 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (80292019)
藤田 健一 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (60281820)
峯 毅 住友製薬(株), 総合研究開発研究所, 主任研究員
鎌滝 哲也 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (00009177)
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研究概要 |
CYP2D6は,精神科領域,心血管領域の薬,および抗ヒスタミン薬など,臨床に用いられる多くの重要な薬物の代謝に関与するチトクロームP450(CYP)分子種である.CYP2D6活性を遺伝的に欠損しているヒト(PM)ではCYP2D6で代謝されるべき薬物が代謝されないため,常用量の投与でも血中濃度の異常な上昇が起こり,効きすぎにともなう有害作用が引き起こされる.申請者らは日本人のPMは欧米人のPMと異なる原因遺伝子多型を有していることを明らかにしてきた.昨年度は,日本人PMより新規な遺伝的多型として,CYP2D6*36(旧名*10C)をタンデムで有するCYP2D6*36-*36を見出した.この多型は日本人におけるPMの原因多型の1つと考えられるが,日本人PMのどの程度をこの多型で説明できるかがわかれば,少なくともこの多型によってPMとなっている患者を遺伝子診断で判定し,副作用を回避させることが可能である.そこで,当該多型の遺伝子診断法を開発し,インフォームドコンセントを得た149名の日本人健常者における本多型の頻度を検討した.しかし今回調べた検体中に本多型を有するヒトは1名も見出すことができなかった.日本人ではPMの頻度が1%未満であるため,今回の検体中にはPM自体が1名いるかいないかの程度である.したがって,さらに大きな集団を用いた解析を行い,多くのPMを解析する必要がある.我々は別の集団でこれまでに少なくとも本多型を有する被検者2名を見出している.さらに最近,国内の他の研究グループでも我々の見出した多型を有する検体を見出し,抗不整脈薬であるメキシレチンの代謝が明らかに低いことが報告された.以上のことから,申請者らが日本人において見出したCYP2D6*36-*36はヘテロ接合体であってもある種の薬物の代謝に影響すると考えられる.頻度に関しても中では比較的高い可能性が考えられるため,早急に本多型の頻度を明確にし,医療の現場に還元する必要があると考えられる.
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