本研究は、生体中から生理活性物質をバイオイメージングとして促える機能性蛍光プローブの開発を目的として行われたもので、具体的には1998年度のノーベル医学生理学賞の受賞対象となった一酸化窒素(NO)の蛍光プローブの開発を目指したものである。開発に際しては、NOの反応性に着目して、これを促えるプローブを種々分子設計し、それらを合成および評価した。その結果、プローブ分子内にジアミノ基を有するDAF化合物が上記の目的に適うことが明らかになった。DAFはNOと水溶液(中性)中、室温で容易に反応し、蛍光を有するトリアゾール環を生成する。実用的感度を有していることから、更にDAFを改良し、最終的に、感度、特異性、光に対する安定性、pH依存性等いずれの点においても、実用上満足できるDAF-FMDAの創製に成功した。これを用いて、実際に培養細胞あるいは生体組織中から生成するNOをバイオイメージングすることを試みた結果、内皮培養細胞からNMDA刺激に対応して生成するNOをバイオイメージングすることができた。また大脳切片を用いて、虚血状態でのNO産生をCA1領域など部位特異的に促えることに成功した。この蛍光プローブの開発に成功したことは非常に意義あることであり、この分野の多くの研究者から共同研究の申し込みが相次いでいる。今後、この生細胞プローブは21世紀の科学といわれる脳研究において強力な武器となるであろう。
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