研究概要 |
8週齢高血圧自然発症ラット(SHR)に各種抗高血圧薬のアンジオテシシン(A)変換酵素(ACE)阻害薬(Temocapril,Enalapril)、AII受容体(ATII-R)拮抗薬(TCV)、血管拡張薬(hydalazine,HDZ)を飲料水に溶解して7週間与えた。15週齢時に麻酔下に測定した頚動脈血圧はいずれも無処置SHRに比較し有意に低下した。腸間膜動脈血管床灌流標本を作製し、低抗血管反応を測定し交感神経刺激による血管収縮反ACE阻害薬、ATII-R拮抗薬によって抑制されたが、HDZでは抑制されなかった。また、ACE阻害薬およびATII-R拮抗薬投与SHR群では交感神経からのnoradrenaline遊離が抑制された。交感神経遮断薬存在下にメトキサミンで血管収縮させ灌流圧を一定のレベルまで上昇させた状態で観察されるCGRP神経の経壁電気刺激による血管拡張反応はACE阻害薬、ATII-R拮抗薬処置で有意に大きかった。また、酵素免疫分析法で測定したPNSによって遊離されるCGRP量は、無処置SHR群に比較してACE阻害薬、ATII-R拮抗薬投与SHR群で大きかった。脊髄後根節におけるCGRPのmRNA量はACE投与群で無処置SHR群に比較して大きかったが、他の薬物投与群では差はみられなかった。さらに、腸間膜動脈標本をCGRP抗体を用いて免疫蛍光染色を行い、CGRP神経の分布量を画像解析装置にて定量的に測定した結果、ACE阻害薬投与群ではCGRP神経の分布が無処置SHRおよびHDZ投与群に比較して多くなっていることが観察された。以上の結果、ACE阻害薬やATII-R拮抗薬などAIIを抑制する薬物はSHRの抵抗血管における血管周囲神経機能の異常を改善することが明らかとなった。これらの薬物は長期投与によってその改善作用を発現することから、原因的治療を可能にする薬物群と考えられる。したがって、本研究によって確立された評価法を用いれば、血管周囲神経機能に影響する新規薬物を探索することが可能と考えられる。
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