研究課題/領域番号 |
10557245
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小田切 優樹 熊本大学, 薬学部, 教授 (80120145)
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研究分担者 |
桑田 茂喜 化学及血清療法研究所, 主任研究員
今井 輝子 熊本大学, 薬学部, 教務員 (70176478)
棚瀬 純男 熊本大学, 医学部, 助教授 (20112401)
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キーワード | アルブミン / 遺伝子組換え技術 / 分子設計 / 機能性評価 / 人工血液 / 血液製剤 |
研究概要 |
本研究では、遺伝子組換え技術を基に異種蛋白質発現宿主としてS.Cerevisiaeを用いて組換え型アルブミン(rHSA)を発現させ、その精製を行った。次いで、作製したrHSAの構造とその安定性及び動態特性について血漿由来のアルブミン(pHSA)と比較した。これらの結果を基に、両者の同等性について詳細な検討を行い、アルブミン製剤の新しい原材料としてのrHSAの有用性を評価した。以下に得られた結果を要約する。 1) 発現系としてS.Cerevisiae(AH22株)を用い、rHSAを発現・精製した。 2) 精製したrHSAの構造特性について、CDスペクトル、^1H-NMRスペクトル、抗HSAポリクローナル抗体を用いて検討した。その結果、二次構造、三次構造及び抗体の認識性にrHSAとpHSAの間で有意な差は観察されなかった。さらに、HSA分子上に唯一遊離状態で存在している^<34>Cysの存在状態についても、ほぼ同様の様式で存在しているものと推察された。 3) 化学的安定性、熱安定性についての各パラメータはrHSA、pHSAともに同様の値を示し、両者に有意な差は観察されなかった。さらに、脂肪酸(オレイン酸等)及びアルブミン製剤に安定化剤として添加されているオクタン酸ナトリウム(OctNa)、N-アセチル-L-トリプトファン(N-Ac-L-Trp)の安定性に及ぼす影響について検討したところ、それらの添加時において、化学的安定性、熱安定性の増大が観察された。また、いずれのHSAも低温殺菌により安定性を大きく失うことが確認されたが、この安定性の低下は両HSAともにOctNa、N-Ac-L-Trp添加により改善された。 4) ^<125>I-rHSA及び^<125>I-pHSAのラットでの体内動態について検討した結果、血漿中濃度推移は2相性を示し、消失相(β相)から算出した半減期(t_<1/2>)は約30時間であった。また、投与96時間後の各組織のKp値及び96時間後の尿及び糞中ヘの放射能の累積排泄率より、両HSAはいずれの臓器にもほとんど蓄積せず、血中から速やかに尿中へ排泄されることが明らかとなった。 以上、今回作製したrHSAの構造特性、薬物輸送機能及び製剤物理化学的特性は、ほぼpHSAと同一であることが確認された。
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