非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の一つであるインドメタシンを用い、関節炎モデル動物における胃損傷発生の変化、ならびに正常ラットにおける小腸傷害性の基礎的検討を行い、以下の成績を得た。 1.インドメタシンの胃粘膜傷害性は関節炎モデルラットにおいて著明に増悪した。インドメタシン胃損傷の増悪は、NO合成阻害剤であるL-NAME、アミノグアニジンあるいはiNOS転写抑制作用を有するデキサメサゾンによって有意に抑制された。また、関節炎動物では、胃管腔内NO代謝物量ならびにプロスタグランジン(PG)の遊離量の増大が認められた。 2.インドメタシン誘起小腸損傷は抗菌物質であるアンピシリン、iNOS阻害薬であるアミノグアニジンおよびiNOS転写抑制薬のデキサメサゾンで防止されたことにより、その発生機序に腸内細菌およびiNOS/NOの関与が示唆された。インドメタシン投与の3時間目以降の腸粘膜ではiNOS-mRNAの発現も観察され、同時に多量のNO産生も認められた。しかし、インドメタシン小腸損傷に対する非選択的NO合成阻害薬であるL-NAMEの作用は複雑であり、前処置による損傷の増悪と後処置による抑制が認められた。L-NAMEの前処置では、腸粘液や水分泌の低下、および腸内細菌の粘膜内浸潤の増加も観察された。NOは本損傷発生において二面的な役割を果たしており、cNOS/NOは粘膜恒常性の維持に貢献しており、またiNOS/NOは本損傷の増悪・進展に寄与するものと推察された。iNOS/NOの増悪作用の詳細については、今後の検討が必要である。 3.NO遊離型インドメタシン(NCX-530)は、インドメタシンと同等のCOX阻害および抗炎症作用を示すにも拘わらず、胃腸傷害性を殆ど示さず、また既存の胃潰瘍に対しても治癒遅延作用を示さなかった。
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