前年度の研究成果から解析を進めた40kDa蛋白は精製解析の結果新規のヒト脳型カルボキシペプチダーゼB(HBCPB)であることが判明した。そ生化学的特性、分子生物学的特性、正常人脳および孤発型における免疫組織化学的知見はつぎのとおりである。(業績1)。HBCPBはエンドペプチダーゼ活性(ヒトAPPを中性pH域で代謝してAβを含むC端側断片群を形成する活性)のほか、最近Aβ42/40のC端側アミノ酸を遊離するエキソペプチダーゼ活性(カルボキシペプチダーゼ活性)をin vitroでもつことが明かになった。HBCPBはトリプシンによりそのプレプロ型からシグナルペプチドと活性化ペプチド遊離した成熟型酵素になるものと推定され、肝臓で産成されている血清型CPB(HPCPB)と類似したcDNA構造をもつ。HBCPBはHPCPBと相互にalternative splicing isoformであると考えられるが、HBCPBには単一エクソンにコードされるC端側ペプチド(C14モジュール)が存在し、その配列は特異的で既知プロテアーゼのどのモジュールとも相同性を認めない。C14モジュールに対する抗体(抗C14抗体)を用いた免疫組織化学的解析の結果、HBCPBの発現は脳特異的で、正常脳では特定のニューロン全て(海馬の菱形ニューロンや外側膝状体ニューロン)の細胞質に均質な顆粒状に存在し特に小胞体に局在することが明かになった。一方孤発性アルツハイマー病脳ではこれを発現しないニューロンや顆粒の形状の異常なニューロンが大部分を占め、HBCPBがニューロン内で何らかの生理機能をもっていることが強く示唆された。その他疾患脳では一部の老人斑での局在、細胞外マトリックスでの沈着を認めた。
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