本研究では全国でも希な長期入院治療下にある肥満小児を対象とし、食事と運動を併用した減量プログラムが血中レプチン濃度、エネルギー代謝、体脂肪分布に与える影響について検討した。対象は単純性高度肥満児童とし、約4ヵ月の減量プログラム前後に形態、体組成、CT撮影、採血、運動負荷試験、エネルギー代謝測定を行った。減量プログラムは各個人の病態、体力値に見合った食事療法と運動療法とした。減量プログラム後、体重は有意に減少したにもかかわらずLBMは増加傾向を示し、脂肪の選択的減少が認められた。同様に血中のTC、TG、LDL-C、GOT、GPT、UAなどの生活習慣病危険因子も改善していた。総脂肪面積と血中レプチン濃度は有意な正の相関を示したことから小児においてもレプチン抵抗性の存在が認められた。総脂肪面積あたりの血中レプチン濃度は減量プログラム後有意に減少し、また総脂肪面積あたりの血中レプチン濃度と基礎代謝量は負の相関を示したことから、減量プログラムに伴い肥満小児のレプチン抵抗性が減弱し、エネルギー消費を増大させる方向へ働いている可能性が示唆された。CT画像から定量した皮下脂肪面積、内臓脂肪面積も減量プログラム後有意に減少したが、エネルギー代謝や血中レプチン濃度との脂肪蓄積部位の違いによる関連は認められなかった。基礎代謝量の絶対値は有意に減少したが、体重あたりでは有意に増加し、エネルギー消費量の増加が認められた。DIT反応は減量プログラム前後で有意な変化は認められなかった。以上の結果より、適切な減量プログラムは生活習慣病危険因子を低減し、さらにレプチン抵抗性を改善させることにより、基礎代謝などのエネルギー消費を増加させ、肥満小児おける将来の生活習慣病予防にとって有用であることが示唆された。
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