耐光性の高い分散及び反応染料の化学構造と耐光性に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10558005
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 大妻女子大学短期大学部
• 研究代表者: 岡田 安代 大妻女子大学短期大学部, 家政学部, 助教授 (90118729)
• 研究分担者: 桧原 利夫 ダイスタージャパン株式会社, 研究所, リサーチアソシエイト ; 姫野 清 ダイスタージャパン株式会社, 研究所, 所長 ; 森田 全三 東京農工大学, 工学部, 教授 (50016408) ; 渡辺 亜紀 大妻女子大学短期大学部, 家政学部, 助手
• キーワード: 反応染料 / 分散染料 / 窒素酸化物堅ろう度 / ポリエステル / 光還元 / 光酸化 / 退色挙動 / 耐光性

研究概要

1.特に、自動車の内装材に用いる超高耐光性分散染料の要求に応じて開発した、アニリノ置換ビリジンをカップリング成分とするモノアゾの赤及び黄褐色系の分散染料を紹介した。この染料は吸光係数が大きいだけでなく、超耐光性のアントラキノン系染料に比べても、明らかに優れた耐光性を持っている。
2.青系のアントラキノン染料と従来型のアゾ染料に代替として開発した、複素環系チオフェンアゾ系の青色分散染料を紹介した。この染料は従来型のニトロ基、ハロゲン基など万全でない置換基を多く含む欠点と、アントラキノン系の低吸光係数を改良した。
3.アミノアントラキノン系反応染料への亜硝酸の作用は、アミノ基のジアゾ化であることを、カップリング反応を利用して、証明した。生成したアゾ基に隣接して、スルホン酸基があると、ジアゾ化物は分子内で安定化され、水溶液中とセルロース上で煮沸しても分解されない。隣接したスルホン酸基が存在しない場合でも分解されない。ジアゾ化後の煮沸でも分解されない。ジアゾ化のされ易さは、C.I.Reactive Blue2の方がC.I.Reactive Blue19よりもずっと大きい。
4.トリフェノジオキサジン(TPDO)は塩素水、光酸化に非常に弱い。この原因を半経験的分子軌道法PM3で検討した。種々の反応位置と反応機構を鮮析した。
N7とC6aへの一重項酸素の1,2-付加(対称なのでN14とC13aも同様)が最も起こり易い。1,4-付加も生じる可能性が高いが、エン反応の可能性はない。これらの反応は、それぞれTPDO分子の表と裏からの対称的な2箇所へ、合計4方向からの一重項酸素の攻撃によることを示した。
5.環境への負荷を少なくするための、低塩反応染色におけるセルロース水酸基の解離の問題を解析した。従来の理論の誤りを修正した。塩添加が少ないと、水酸化物イオンがセルロースから排除されるので、外浴よりもセルロース内のpHが低下する。

研究成果

• [文献書誌] T.Hihara and J.Seiler: "New Azo Red Yellow Brown Disperse Dyes with Superior Light Fastness." 7th International Conference on Organic Dyes and Pigments (Colorchem'98),May 17-21,Pardubice-Rybitvi, Czech Republic. Proceeding. 18-19 (1998)
• [文献書誌] T.Hihara,Y.Takahashi,and K.Himeno: "New Brilliant Thiophene Azo Blue Disperse Dye with Excellent Fastness." International Symposium in Wakayama on Dyeing and Finishing of Textiles,November 30-December 2,Japan.Proceeding. 186-187 (1998)
• [文献書誌] A.Sugane,A.Watanabe,Y.Okada,and Z.Morita: "Color Variations of Reactive Anthraquinone Dyes on Cellulose by Nitrogen Oxides under Wet Conditions." International Symposium in Wakayama on Dyeing and Finishing of Textiles,November 30-December 2,Japan.224-225 (1998)
• [文献書誌] Z.Morita,M.Shinozaki,and M.Kitaoka: "A Semiempirical Molecular Orbital Study on the Reaction of Triphenodioxazines with Singlet Molecular Oxygen." International Symposium in Wakayama on Dyeing and Finishing of Textiles,November 30-December 2,Japan.226-227 (1998)
• [文献書誌] H.Motomura,S.-H.Bae,and Z.Morita: "Dissociation of Hydroxyl Groups of Cellulose at Low lonic Strength." Dyes and Pigments. 39・4. 243-258 (1998)