研究分担者 |
篠原 和大 静岡大学, 人文学部, 助教授 (30262067)
浅井 辰夫 静岡大学, 農学部, 助手 (20091150)
中村 郁郎 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (50207867)
岡村 道雄 文化庁, 文化財保護部, 主任文化財調査官
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研究概要 |
今年度は4度大阪府立弥生文化博物館を訪ね,ひきつづき佐藤敏也コレクションの整理収集にあたるとともに,一部,これ以外に新たに持ち込まれたイネ種子(発掘された炭化米が中心)のDNA分析を行った. 1.佐藤コレクションの整理はほぼ終了しデジタル顕微鏡による写真撮影も順調に進んでいる. 2.もちこまれた炭化米は,滋賀県守山市下之郷遺跡,福岡県福岡市板付遺跡などのもので,総点数は5000粒ほどである.これらからランダムに抽出した個体からSDS法によってDNAを抽出した.なお下之郷遺跡の炭化米中から,熱帯ジャポニカに固有の形質である「長護頴」の個体を検出した.下之郷遺跡から得られた炭化米の1つが,DNAレベル(葉緑体DNAのPS-ID領域)でも熱帯ジャポニカに属することが新たに明らかとなった. 3.板付遺跡の炭化米は総数が4800にも達し,全体のDNA分析は行えなかった.しかしその一部を抽出してDNA分析を行っている. 4.下之郷遺跡および板付遺跡のほか,日本列島各地の遺跡から出土した炭化米のDNA分析を行った.その多くは弥生時代のものであった.これらのうち約40%ほどが熱帯ジャポニカに固有のDNAパターン(葉緑体DNAのPS-ID領域のほか、ランダムに増幅させたDNA領域のデータを含む)を示したことから,同時代にはまだ熱帯ジャポニカの栽培が普遍的に行われていたことが明らかとなった.日本列島には縄文時代にすでに稲作が渡来していたものと見られるが,今年度の研究成果は,弥生時代の稲作が縄文時代の稲作の継承であった可能性を強く示唆している.
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