研究課題
日本各地の遺跡からは多量のイネ種子が出土しているが、その大半は黒化し炭化米と呼ばれている。故佐藤敏也氏が1960年代から1985年ころに収集した炭化米(これを佐藤コレクションという)を中心としてそれらの情報、とくに遺伝情報を1次資料化し、将来のデータベース化に備えようというものである。まず研究では佐藤コレクションについて、収蔵されている大阪府立弥生文化博物館の協力を得てその数や整理状況を調査した。それに基づき、遺跡・遺構ごと、整理箱ごとのサンプルを整備した。そのデータは4月に刊行する報告書に取りまとめて掲載の予定である。次に、それらの外形データを整理するため1粒を単位に写真撮影にとりかかった。撮影はすべてCCDカメラを用い画像はデジタル画像として保存している。画像の平均の大きさは1.5ないし2Mb程度である。これらのデータは膨大であるので、今後データベースのかたちで公開してゆきたい。さらに、最近各地で出土した炭化米を中心にDNA分析を行った。全部で17遺跡から207粒の炭化米について分析を行った。DNA抽出はSSD法ないしはアルカリ法で行い、増幅はPCR法によった。その結果、古代の日本列島のイネのほとんどすべてがジャポニカであったこと、また約40%ほどの確率で熱帯ジャポニカの系統が含まれていることなどが明らかになった。熱帯ジャポニカは、場所、時期を問わず出土しており、当時の日本列島にひろく分布していたものと思われる。