研究課題/領域番号 |
10558008
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研究機関 | 東京国立文化財研究所 |
研究代表者 |
増田 勝彦 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 部長 (40099924)
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研究分担者 |
青木 睦 国文学研究資料館, 史料館, 助手 (00260000)
田良島 哲 文化庁, 文化財保護部・美術工芸課, 調査官
川野辺 渉 東京国立文化財研究所, 修復技術部・第2修復技術研究室, 室長 (00169749)
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キーワード | 屏風 / 下張り / 文書 / 剥離 / 温度 / 水蒸気 / 和紙 / 熱水 |
研究概要 |
本年度は、蒸気発生器による(昨年度購入)、文書剥離実験を行った。下張り紙に見られる、2枚小麦澱粉糊で張り合わせた楮紙をサンプルとし、箱に密閉し、蒸気を導入した後、剥離の容易さをテストしたところ、やや紙の損傷を少ない状態で剥離することが可能となったので効果ありと判定した。そこで、縦170cm横50cm厚さ30cmの箱を作成し、下張りを有する屏風下地を箱内に置き、箱に接続したホースを通じて蒸気を導入してテストを行った。蒸気導入を開始してから、剥離に効果を期待できる蒸気が箱内に充満し、下張り紙に浸透するまで、1時間以上を要し、また下張り全体が加熱されているため、取扱まで冷却が必要になるなど、実作業上不利な点が確認された。 昨年の実験では、加水加熱法が、実際の剥離作業には最も良い成績を示しているので、剥離に関しては、当初計画を変更する事とした。しかし、加熱による紙の劣化が懸念されていたため、加水加熱処理後の楮紙の紙力低下を測定した。 熱湯95℃に楮紙を浸し、5分経過後に引き上げ、自然乾燥したサンプルの、引張力を測定した。その結果、コントロールと比較して、紙力低下が認められなかった。海外文献に於いても同様な実験結果が出ており、和紙洋紙ともに、手漉紙では、熱湯による紙力低下がみられないとするのが妥当である。 本研究の結論としては、加水加熱法即ち、刷毛による加水とアイロンその他による加熱を利用することが、現時点では最も有効な手段であることを確認した。 そこで、研究分担者を中心として、下張り紙を剥離し、文書を整理、記録する方法の検討を行いフォーマットを作成した。またその仕様に従って、江戸時代屏風の下張り文書の加水加熱法による剥離と整理法フォーマットに基づく剥離文書の整理を行った。
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