本研究は、経験や専門性のない者に対し隔壁を示す脊椎動物の培養細胞を、「時、人、場所」を選ばず誰にでも使用できる「培養細胞キット」として開発し、高校・大学等の教育機関における生物教育や環境教育の場で活用することを目的する。 本年度における成果実績としては、 1 「培養細胞キット」の主題細胞CHSE-spの簡便安定な培養法ならびに低温管理法を検討した。その結果、培地中の血清(FBS)濃度は3%、静置浮遊状態ではなるべく低温(例えば1℃)において、状態の良い細胞の供給が可能であった。また、利用者における細胞保存容器は、ポリメチルペンテン等の揆発性材質が適していた。本材質はpHの低下を抑制し安定した細胞状態を与える。これらの知見については、平成11年度日本水産学会春期大会の講演要旨♯1304「誰でも使える魚類細胞:培養細胞キットの開発と静置浮遊/低温培養」に記載した。 2) 研究協力者(CHSE-sp細胞キットの利用評価者)森真朗、若林明子(東京都環境研基盤研究部)により、CHSE-sp細胞の化学物質に対する基本的感受性が明らかとなった(第33回日本水環境学会講演要旨♯1-G-13-4に内容記載)。 3) 雑誌「化学と生物」(11月号1998)に本研究の内容を掲載したところ、多数の研究者並びに高校生物教師から細胞利用の要望を受けた。プロトタイプの細胞キットを発送し、その利用状況等をアンケート調査するとともに、生物担当教師の研修会へ講師として出向き、実技指導を行った。
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