研究概要 |
腋下の高さの半透明スクリーンに上方よりプロジェクタにより指示開始点P_0と視標の2点を投影し,スクリーン上をCCDカメラで撮影した.被験者はスクリーンを台に固定したHead Mounted Display(HMD)を介して見る.P_0を円心とした半径13cmあるいは10cmの円周上に8点あるいは5点の視標を配置し,その同心円周上にCCDカメラを本来の視線方向を0°として反時計回りに0°,15°,30°,45°,90°,180°の点に設置する.カメラを本来の視線方向と異なる位置に設置することにより,視覚と固有受容感覚間に矛盾を生じさせ,その状態でP_0から視標までの指示運動を行わせた. 健常成人の計測の際には視標を半径13cmの円周上の8点とした.カメラ設置角度が増加するにつれて軌跡が弧状にふくらむ傾向が見られたので,評価項目としてP_0から視標までに移動した距離を移動距離d,P_0と視標を結ぶ直線と軌跡のなす領域を軌跡のふくらみA,視標を指示するまでの時間を所要時間tとそれぞれ定義した.その結果,角度条件間の比較ではdが90°と180°条件において,Aは全条件間で,tは180°条件においてのみ有意な増加が見られた. 健常児の計測では,指示の容易さを考慮して90°までの5条件とした.また,視標は半径10cmの円周上の8点である.計測の結果,30°以上の条件においてセッション間の有意な減少がみられ,適応の向上が確認できた.また10歳児群は4〜6歳児群と比較して全カメラ設置角度条件において有意に小さなAとなり,30°条件においては4,5,6歳児群間で有意差が見られたため,加齢による空間知覚の向上が評価できる可能性が示された. 学習障害(LD)児の計測では,45°までの4条件とした.視標は半径10cmの円周上の5点である.計測の結果,LD児ではカメラ設置角度条件間でふくらみAの有意差が見られなかった.また,セッション間の有意な減少がみられず,3セッションでは適応が進まなかった.LD児は同年代の健常児より有意に大きなAとなることが分かった.以上のことからAの大きさの比較およびセッション間の減少傾向の有無によって健常児とLD児を弁別できる可能性が示唆された.
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