研究概要 |
本年度は,以下のとおり,代数モデルによるUMLの意味論の記述と,代数仕様言語用モジュールシステムの設計・検証を行なった. 1. 代数モデルによるUMLの意味論:UMLのクラス図とCafeOBJの振舞仕様とを対応づけることにより意味を明確にする方法を提案した.この方法ではUMLのクラス図から振舞仕様の指標,振舞仕様からUMLのクラス図を得る事ができる.さらにUMLで記述された仕様に自然言語の説明やstate chartがある場合には,それらを基に振舞仕様の等式を記述することが可能である.システムの動作を記述するUMLの要素(state chart等)を,どのように振舞仕様に対応させるかについては今後の課題である. 本方法は,UMLで記述された仕様に形式仕様を使って厳密な意味を付加するための方法として使える他に,UMLを振舞仕様のユーザインタフェイスとして使うための基礎としても有効である.本方法では,振舞仕様から対応するUMLの完全なクラス図が得られるので,形式仕様の可読性の向上に貢献できると考えられる. 2. 代数仕様言語用のモジュールシステムの設計・検証:代数仕様言語のモジュールシステムのモジュールとしてソフトウェアコンポーネントを効率よく扱うには,効率のよいモジュールシステムが必要である.そこで,代数仕様言語用のモジュールシステムの仕様をCafeOBJで記述し,モジュールシステムのデータ構造をStandard MLの実装を参考に設計するとともに,その仕様をCafeOBJで記述した.前者の仕様を要求仕様,後者を設計仕様と呼ぶ.設計仕様が要求仕様の詳細化であることをCafeOBJを用いて検証した. 以上をもとに,次年度以降では,引続き「代数モデルによるUMLの意味論の記述」および「代数仕様言語用のモジュールシステムの設計・実現」を行ない,目的とする仕様言語の設計を開始する.
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