研究概要 |
(1)3次元解剖学的モデルに基づく病巣,血管分離アルゴリズムの新規開発. False Positive Rate(以下FP)の発生原因別統計を取ったところ,肺内に存在する動脈・静脈陰影に起因する率が64%と最も多数であることが判明した.そこで,3次元解剖学的モデルとして血管陰影を取り上げて解析を行った.既に検出されている病巣候補領域(以下,関心領域)は,病巣単独で存在するケース,病巣と血管が複合して存在するケース,血管分岐部などを有する複数の血管が集合しているケース,に分けることが出来る.それぞれのケースに対して解剖学的に考え得るあらゆるモデルを自動生成させて関心領域と比較し,その中から確率的に最も妥当と見なせるモデルを特定することにより,関心領域が病巣を含む領域か,そうでないかを決定するアルゴリズムを完成させた. また,上記研究成果にヒントを得て,新たに肺野内の全領域から血管陰影を自動抽出するアルゴリズムを完成させ,この血管陰影上に存在する関心領域は血管の一部である確率が高いとして削除する論理を開発した.これによりFPの約60%を一挙に削減することに成功した. (2)病巣サイズにAdaptive対応する可変Quoit方式の開発. 病巣候補となる関心領域の自動抽出法として,申請者らはQuoitフィルタと名付けた方式を開発したが,これは領域抽出のためのリングフィルタ半径が固定値であったため,病巣サイズの変化に対して柔軟に対応できなかった.そこで,新たにこのリングサイズを入力画像そのものから,場所ごとに適応的に抽出するアルゴリズムを完成させた.また,研究途上で新たに問題となった非常に淡い病巣陰影を正確に抽出するため,病巣陰影強調用の前処理アルゴリズムを完成させた. (3)リアルタイム,動的MIP方式の開発. 医師が診断する場合の支援情報として,MIP法と呼ばれる2次元射影像をリアルタイム動画表示する方式を検討し,そのアルゴリズムを完成させた. (4)診断支援システムとしてのGUIシステムの試作 上記(1)〜(3)の成果を利用して医師が診断を行う上で重要なGUI(Graphic User Interface)システムを新たに開発した.
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