トリチウム取扱施設での実験装置や実験室の排気形に連結されるトリチウムガス捕集装置としては貴金属触媒あるいは金属酸化物触媒を高温で用いる酸化吸着法が主に研究されている。これらでは加熱や除湿の前書影走査が必要になる。本研究では、強いトリチウムガス酸化能を持つ土壌細菌をバイオリアクターに用いその水素酸化酵素の働きにより取扱施設の事故時に常温常圧で安全且つ安定した性能を持つようなトリチウムガス捕集装置の開発を目的として、菌株の検索とトリチウムガス酸化能を最も強く発現するような培地や生育条件の検討を行った。 国内の土壌から分離したトリチウムガス酸化活性の高い菌株の中から16菌株を選んで、14種類の栄養条件の培地での生育と酸化活性の関係を調べた。またアメリカとイタリアの土壌から分離したトリチウムガス酸化活性の高い菌株それぞれ15株と14株についても4種類の培地で比較検討した。その結果、これらの土壌分離菌株の性質は多様で、栄養条件によって水素(トリチウムガス)酸化酵素の遺伝子の発現が調節されている菌株と調節されない菌株があることが分かった。国内の土壌から分離した菌株の内で前者の調節されているタイプからはマンノースを炭素源にしたとき極めて高い活性を示した1菌株、後者のタイプからは炭素源がなくてもグルコース存在下の1/3程度まで生育し、菌体当たりの酸化活性は炭素源の有無によらず同一であった1株をバイオリアクターに適する特性を持つ菌株として選択した。一方アメリカ土壌からの菌株では2株が貧栄養培地で最も高いトリチウムガス酸化活性を示したが生育が比較的低く、イタリア土壌からの菌株は各種条件下でいずれも酸化活性は際だって高くはなく、選択されなかった。
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