研究概要 |
近い将来に予想されるウラン資源の不足に備えて,海水に溶存しているウランを採取する研究が進められてきた.海水中でウランは,1m^3中に3mgの濃度で,三炭酸ウラニルイオンという形態で溶けている.黒潮の流れに乗って毎年約500万トンという量のウランが日本の近海を流れている.海水中のウランを選択的に吸着する官能基としてアミドキシム基が選ばれてきた.アミドキシム基をさまざまな高分子マトリクスに導入して吸着材が作成され,その性能が評価された.高分子マトリクスの物理的強度を保ちながら官能基を導入できるという放射線グラフト重合法の利点を生かして,わたしたちはポリエチレン製繊維からアミドキシム吸着材を作成した.さらに吸着速度を上げるためには,ウランの吸着材内での拡散を促進する必要がある.本研究では,アクリロニトリル(AN)に親水性モノマー(ここではメタクリル酸MAA)を共グラフト重合させた後にアミドキシム化し,吸着材を調製した.調製した吸着材を充填した装置を,深さ43mの海域に係留し,ウランの吸着実験を実施した.ANとMMAとの共グラフト重合させたポリプロピレン製不織布から作成したアミドキシム吸着材を使うと60日間でウラン吸着量が1.7g-U/kgとなった.また,ウランとともにバナジウムが約2倍量吸着することがわかった. さらに、海水中からのウラン吸着とそれに続く塩酸中でのウラン溶出の繰返しに伴う吸着材のウラン吸着性能の低下を抑えるために、ANとMAAに加えて親水性架橋剤を共グラフト重合させた。これにより、吸着溶出の繰返しに対して高い耐久性を示す吸着材を得ることができた。
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