研究概要 |
大気中に存在する二酸化炭素(CO_2)および海水中に存在する全二酸化炭素(TCO_2)の精密測定装置・方法を開発し,(大気-海洋)間のCO_2の交換速度・量の正確な計測を行うことを目的として研究を進めた.更に,CO_2,TCO_2測定を現場で行うための小型オンサイト精密測定装置を開発した.これらの装置・方法に適用できる新規検出試薬の合成に成功したことにより,CO_2,TCO_2の高感度・精密定量のための新しい定量法の確立に成功した.開発した測定法を用いて水溶液への二酸化炭素の溶解平衡の詳細な検討が初めて可能となった.以下に本研究の主要な成果をまとめる. 1.CO_2,TCO_2のオンサイト計測装置の開発(小型化とポータブル化) FIA方式小型ポータブルCO_2,TCO_2測定装置の開発に成功した.この装置は,縦・横各16cm,奥行き32cmのワンボックス,重さ7.5kg,12Vバッテリー駆動方式,ノート型パーソナルコンピュータにデータ保存・処理可能である.更にオンサイト型高効率ガス透過装置の開発のために,透過率の高効率化・長時間の安定化を可能とするガス透過装置を設計・製作し,前記FIA装置に組み込み可能なミニチュア装置(長さ3cm,径2cm)開発に成功した.この測定装置は世界で初めての本格的ポータブルCO_2測定装置である. 2.高感度検出試薬の合成・開発と反応系の開発 LED光源(450nm,530nm,650nm)に対応できる高感度検出試薬の合成・開発として,酸解離定数が8〜9付近にあるアゾナフトールスルホン酸類を開発し,水中の10^<-7>〜10^<-6>MのCO_2の精密高感度測定に初めて成功した. 3.二酸化炭素の溶存状態精密解析 海水中の炭酸イオンの錯形成平衡の精密解析法として精密移動度測定法による解析法を確立し,無機イオンと炭酸イオン(HCO_3^-,CO_3^<2->)の錯平衡解析に成功した.これらの平衡定数とpH,TCO_2のデータより海水中の溶存化学種予測法確立が可能となる.
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