研究概要 |
本研究は,大気中の二酸化炭素(CO_2)および海水中に存在する全二酸化炭素(総炭酸)のオンサイト精密測定装置を開発し,(大気-海洋)間のCO_2の交換速度・量の正確な計測を現場で迅速・正確に行うことを目的とした.そのために必要な精密測定装置及び測定法を新たに開発した.これらの装置・方法を用いて,海水中の総炭酸及びそれと接する大気中のCO_2の精密測定が初めて可能となった.更に,平衡論的解析法を用いて海洋中のCO_2の溶存状態を明確にし,(大気-海洋)間の分配平衡・平衡速度を求めることができた.主な実績は次の通りである. 1.FIA方式ガス拡散/吸光検出法に基づく大気,海水中の総炭酸定量用可搬型精密測定装置開発:測定現場に運び容易に測定できる可搬型フローインジェクション方式総炭酸測定装置を開発した.この装置は,新開発の高効率ガス拡散ユニットを内蔵し,重さ約8kg,12Vバッテリー駆動方式である.海洋水は,直接注入し,短時間(約3分)で測定できる.大気試料は2mlの吸収液を入れたプラスチック製シリンジに採取し,吸収液を測定装置に注入することで測定できる.海洋,大気の両相の濃度が同時に測定可能となり,平像,非平衡等のオンサイト情報を初めて求めるとができた.2.総炭酸のオンサイト検出試薬の合成・開発と高感度検出反応系の開発:高感度測定用の発色試薬として,アゾ系試薬の合成・開発に成功した.この試薬は450nmでの測定に使用でき,LED光源による吸光光度測定が可能となり,測定の安定性,信頼性,省電力等のメリットが生まれた.3.海水中のCO_2の溶存種解明,化学反応の解析と全溶存種の濃度解析システムの構築:海水中の水溶液内平衡ね反応と総炭酸濃度を用いて,溶存化学種濃度を予測することが可能となった.これにより,(大気-海洋)間のCO_2の分配平衡及び分配速度の解析に初めて成功した.
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