研究課題
基盤研究(B)
小型気球で放球が可能な小型軽量の成層圏大気サンプラーの開発を目標として、高圧ネオンガスの断熱膨張から寒冷を発生させる小型クーラーを用いた大気サンプリング装置の試作と低圧大気採取実験を実施した。小型クーラーに液体窒素温度まで予冷した高圧ネオンを導入することによって、高圧ネオンガスをその液化点まで冷却すること、そして発生した寒冷を用いて圧力範囲が25〜200hPaの空気試料を固化・採取することに成功したが、空気試料圧力が60hPa以下の場合と120hPa以上の場合で試料採取速度の時間変化に大きな違いがあることが明らかになった。すなわち、60hPa以下の場合には、大気試料の採取速度はほぼ一定で採取開始から少なくとも10分間は連続して試料が採取されるのに対し、120hPa以上の場合は試料採取開始から約3分で試料採取速度が0になる問題が生じた。試料空気圧力によって採取速度や採取試料量が異なる原因を明らかにするために構造の異なる数種類のクライオヘッド(液体ネオン温度に冷却されて低圧空気を固化採取する部分)を設計・製作し、低圧空気の採取実験を実施した。また、クライオヘッド各部分の温度を監視することで、試料空気がクライオヘッドでどのような変化を起こしているかを調べた。その結果、試料圧力が高くなると外部からの侵入熱の大きさが無視できなくなりクライオヘッドに温度勾配ができた結果、試料圧力60hPa以下の場合には全空気成分がクライオヘッドに固化吸着しているのに対して、120hPa以上では一部の空気成分が液化・再蒸発を起こしていることが明らかになった。この問題を解決するためにクライオヘッド部分の改良についてさらに検討を行い、クライオヘッドの構造を工夫することによって120hPa以上の圧力でも連続して大気採取が可能になることが示された。本研究によって小型成層圏大気サンプラーの低圧試料採取部分の開発にほぼ成功した。小型気球に搭載するための制御部・通信部などは現有の技術で対応できるため、実用化は可能と考えられる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (9件)