研究概要 |
1. メダカ免疫関連遺伝子、特に哺乳類MHCにコードされる遺伝子のクローン化、解析を行った。先ず、MHCクラスI抗原の提示過程に関与するTAP2のクローン化を行い、LMP2,LMP7と連鎖することを明らかにした。クラスIA遺伝子もこれらと連鎖していることを示す予備的な結果を得ており、MHCの中核をなすのはクラスIAとその抗原の提示過程に関与する遺伝子群であることが強く示唆された。また補体C4と2種類のC3クローンを単離、解析した。2種類のC3はその一次構造からチオエステル結合の反応性に差があることが示唆され、獲得免疫系が未発達な硬骨魚においては、補体系が生体防御に、より積極的な役割を果たしている可能性が示された(野中)。 2. 哺乳類3種のリガーゼの中から、本年は特にIVに注目して研究を進めてきた。IVはXRCC4遺伝子産物と相互作用し、DNA2本鎖切断の修復に関与している。われわれはまず、哺乳類培養細胞を用いてこのDNA2本鎖切断修復系が、X線やX線類似物質(ブレオマイシン、BUdR+紫外線など)による2本鎖切断には関与するが、他のDNA損傷には関与しないことを突き止めた。IVが主として放射線タイプの傷に関与することが判明したので、現在メダカを用いてこの遺伝子のクローニングを行っているところである(木村)。 3. 10年度は正常メダカを用いて,水に溶解した化学物質の毒性影響を評価する系の確立すなわち,魚の飼育系の確立,難水溶性化学物質の溶解法等を検討した。また,より簡便に評価する系の一つとして魚類細胞を用いて毒性影響を調べる系の開発も検討した。細胞の培養法の確立,評価法の検討を行った(茂岡)。
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