研究概要 |
1.本年度は免疫反応の制御に重要な役割を果たす、メダカの主要組織適合性抗原複合体(MHC)の構造解析を進展させた。これまでにメダカのMHCクラスI領域、約400kbをカバーする4ヶのBACクローンを単離しているので、今年度はそのうち約半分をカバーしているクローン187N22の解析を行った。ショットガン法により全長209kbの全塩基配列を決定した。本領域からはLMP2,LMP2-like,MECL-1,LMP7 x 3,ClassIA x 3,TAPASIN,DAXX,BINGl,KNSL2,CIZ,FLOTILLIN,TUBULINの各遺伝子が同定され、その遺伝子構成は哺乳類MHCクラスII領域に酷似していた。しかしながら、哺乳類クラスII領域に存在するクラスIIA,B遺伝子の代わりに、重複したクラスIA遺伝子が存在し、MHCの原型は、機能的に密接な関係を有するクラスIA遺伝子とその抗原提示に関わる遺伝子からなっていたことが強く示唆され、これらの遺伝子が獲得免疫欠損メダカ作成の際の有力な標的になることが示された。一方、自然免疫に中心的な役割を果たす補体C3遺伝子の解析では、縦列遺伝子重複によりコピー数が8〜10に増えていることが判明した。この結果は、硬骨魚における自然免疫の相対的重要性を示唆するものではあったが、C3は遺伝子破壊の標的としては適さない事が判明した(野中)。2.昨年度、メダカのリガーゼをノックアウトするため、RNAi法を検討中であることを報告した。本年度は、その前段階として、RNAi法を用いたGFP遺伝子のノックアウトを試みている。pEGFP-Nlベクターに組み込んだGFPが孵化後の幼魚に安定に発現していることをつきとめたので、現在二重鎖RNAがこれをノックアウトするかどうか実験中である(木村)。3.本年度も、化学物質の簡便な毒性試験法の開発に努め、小容量の容器を用いたメダカ飼育系を確立した〔茂岡〕。
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