研究概要 |
野中:メダカの獲得免疫、自然免疫に関わる遺伝子のcDNAの単離、ゲノム構造の解析を行った。獲得免疫関係では、哺乳類の主要組織適合抗原複合体(MHC)に存在する遺伝子に着目して、そのメダカホモローグの単離を行い、遺伝子座を決定した結果、哺乳類MHC領域に存在する遺伝子がメダカゲノムでは多くの染色体に分散して存在することが判明した。にもかかわらず、クラスIA遺伝子とクラスI抗原提示に関与するいくつかの遺伝子は緊密に連鎖しており、これらの遺伝子が脊椎動物MHCの中枢部分であることが示唆された。この領域、約200kbをカバーするBACクローンを単離し、その全塩基配列を決定し、16ヶの遺伝子を同定した。自然免疫関係では、補体系のC3,C4,B因子の遺伝子を単離した。そのうち補体系の中心成分C3の遺伝子はコピー数が10程度に増幅しており、獲得免疫が未発達な硬骨魚類では、自然免疫がより重要な役割を果たしている事が示唆された。 木村:DNA損傷の修復に関与するDNAリガーゼ、環境要因を検出する神経系の情報伝達に関与するDRP遺伝子の解析を行った。後者は哺乳類とほぼ同じ遺伝子のセットが検出され、この情報伝達系は脊椎動物の進化過程を通じて保存されてきたことが示された。また、遺伝子機能抑制の試みではGFP遺伝子を用いてRNAi法の有効性を検討した。 茂岡:環境中の化学物質による毒性を効率よく検出するためのアッセイ系を確立した。飼育容器の小型化により、多種の化学物質を同時に評価できるようにすると共に、メダカ細胞の培養系を確立し、細胞レベルでの毒性試験も可能にした。
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