本研究では、環境有害因子の人の健康影響をアポトーシス制御系で評価しようというものである。そのためには、1.血中レベルでアポトーシス シグナルを同定すること。2.早期高感度健康影響評価法のためのアポトーシス制御系因子の同定。そして、3.環境の異なる地域住民の血液採集と応用を試みることである。これらの点を中心に本年度の成果を報告する。 1.塩化水銀を環境有害因子としてラットを用いた動物実験を行った。塩化水銀(2mg/kq)を皮下投与し、抗血液凝固剤を用いて採血した(1ml、)。採血した血液から、市販のDNA抽出剤を用いて可溶性DNA画分を抽出し、DNAがフラグメント化しているかどうかをアガロース電気泳動で調べた。 その結果、エチジームブロマイド染色法では、うつすらフラグメントが見えるか見えないかの程度であった。つまり、アポトーシスの結果をDNAフラグメント化で見ようとした場合、量的問題が残った。そこで現在PCRを応用した方法の条件検討を行っている。 2.重金属カドミウムと培養細胞を用いて、環境有害因子によるアポトーシス誘導の分子機構を詳細に調べた結果、重金属によりナポトーシス関連遺伝子であるc-mycが、曝露初期に活性化されるが、重金属によるアポトーシス誘導経路には関与しないことを証明し(研究発表1)、早期健康影響評価法のための因子にはならないことが明らかになった。重金属や過酸化ストレスの軽減因子であるメタロチオネインもこれらのアポトーシス誘導経路には関与しないことが明らかになった(研究発表2)。 3.環境の異なる地域住民として、東京都杉並区住民と茨城県高萩市住民の採血収集を始めた。
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