研究概要 |
本研究では、環境有害因子の人の健康影響をアポトーシス制御系で評価しようというものである。そのためには、(1)血中レベルでアポトーシスシグナルが同定できること。(2)環境の異なる地域住民の血液採集し、本研究で確立した方法の応用を試みること。そして、(3)早期高感度的に健康影響評価法のための新たなアポトーシス制御系因子の同定をすることである。 (1)動物実験の結果、血中アポトーシスシグナルをDNAフラグメント化で検出する場合、量的問題が残った。そこで、昨年度はPCR法を用いて少量のDNAフラグメントを増幅することによりその問題を解決した。人工的に合成した12塩基よりなるオリゴDNAをいかなるDNAフラグメントに対しても結合することができるようになり、いかなるDNAフラグメントのPCRも可能となった。この方法では、50ngのDNAフラグメントがあれば検出可能であり、従来の100-1,000倍感度が上昇したことになる。(2)環境の異なる地域住民として、東京都杉並区住民と茨城県高萩市住民を選択し,1-2mlずつ各地域50人以上の血液が集まった。血液からDNAを抽出する回収率を予備実験で見積もると,1ml血中当り3-5ug DNAであった。これは、(1)の解析に充分量である。しかしながら、採血方法などによると思われるアーティファクト(人為的産物)が混入することがわかり、今後に課題を残した。(3)重金属カドミウムと培養細胞を用いて、環境有害因子によるアポトーシス誘導の分子機構を詳細に調べた。抗アポトーシスタンパク質であるBcl-2が活性化されることは昨年報告したが、更に他のBcl-2familyにも活性化するものがあることが明らかになった。新たな防御機構が判明したが、「死のシグナル」を伝達する分子については依然不明のままである。
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