研究概要 |
(1) 水質浄化施設内では溶存態有機物を分解する微生物の遺体や施設内に補足された懸濁物質が堆積し,底泥化が生じた.さらにこの底泥からは赤潮の原因物質となる窒素やリンが溶出し,海水を再汚濁させる恐れもあることがわかった.そこで,潜在生態系とコスト,消費エネルギーに配慮した底泥除去手法として,ゴカイやナマコなどの堆積物捕食生物を活用することを考えた.ゴカイの底泥除去能力は10.6mgSS/個体/日であり,底泥除去には55個体/m2程度の個体を維持する必要があると推算された. (2) 個体数維持のために魚介類からの捕食圧を低めるために,ポーラスコンクリートの空隙を生息場として与えた.コンクリートからの溶出物質によってpHが高まり,10以上となるとストレスとなり,11以上になると死滅することがわかった.現地実験においては28日後にもコンクリートからの溶出は続き,pHは10程度となっていたが,ゴカイは生息場として,空隙を利用し,生存できることがわかった.また適切な空隙特性についても提案することができた.今後,ポーラスコンクリートの空隙を利用し,再生産が行われるかについて検討する必要がある. (4) ナマコを用いた底泥浄化実験を行った結果,底泥を摂食し,約19〜30g/個体/日の糞を排泄した.糞の有機物量をはじめとする汚濁物質量は底泥よりも低い値であった.特にヘドロ臭の原因物質である底泥中の硫化物濃度は著しく低下し,底泥浄化に有効であることを示すことができた.実用化にあたっての課題は,実海域での効果検証と個体数維持について検討することである.
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